占い講座11−1
「私は今すぐに幸せになりたいのです」
その女性は運命分析が始まると、開口一番こういいました。年のころは三十代の前半でしょうか。女性の相談者で年齢よりはかなり老けて見えます。生活の苦労がどことなく顔全体に滲み出ており、目はガラス球のような生気の感じられない目をしていました。全体の容姿に運命の危険な兆候が出ていました。
十年ほど前に結婚をしており、現在はご主人と子供一人の三人暮らしです。結婚当初はどこにもある平穏な家庭だったといいます。しかし、数年前のご主人の浮気をきっかけにして、家族の空気がガラリと変わったようです。
「こんな生活を続けるのは嫌なのです。何か、幸せになる方法はありませんか?」
その相談者は現在の煮え切らない生活を変えたがっていました。そこで私が何か良い方法を知っているのではないか、と思って訪ねてきたようです。
「今、引越しをしようと思っています。方位などで、運命を変えられませんか」
最近の風水ブームでこのような相談が増えてきました。この女性も風水などの神秘的な力を使って、今の状況を好転させられると思い込んでいるようです。その相談者の場合は、現在の自分の煮え切らない心境を不思議な力で補おうと考えているようでした。
占い講座11−2
■運命に出ている過去の失敗の暗示とは
私はその相談者の話を一通り聞いたうえで、相談者の基礎資料に目を通します。
まず、その人の幼少期から見ていきます。幼少期の環境を知ることで、その人がどのような影響を受けてきたかを予測します。その相談者の幼少期は比較的安定しており、運命的には何の波乱もない時期でした。その時期は両親にも恵まれており、大きな問題もなく幸福に育ったようです。ここまで何の問題もありません。
次に結婚した時期をみていきます。結婚した時期も最初の数年間は幼少期から続いていた平穏な時期の流れに乗っており、幸福な生活が続いたようです。問題はその先でした。結婚の数年後に大きな周期の変化が起きていました。その周期は当の女性にとってはかなり厳しい周期であり、特に愛情面に関する否定的な影響が生じてくる時期でもありました。
ご主人の浮気という現象は、その象徴的な運命のサインが実際に現実化して現れてきたものだといえるでしょう。つまり、その時期にご主人が浮気したことは、ただの偶然ではないことになるのです。もし、それがただの偶然ならば、配偶者の運命の中にこうした情報が出てくることは無いでしょう。
その女性の運命は愛情に関する問題がその時期に生じてくることをたしかに告げていたのです。その女性は自分のこうした運命に何となく気づいていたのかもしれません。それで運命のことを深く考えるようになったのではないでしょうか。
まず、分析の流れから考えると、彼女にこうした自分の本当の心理状態を悟らせねばなりません。
「大変残念ですが、今すぐに運命を変える方法などはありません」
女性はがっかりしたように肩を落としました。しかし、私にはその女性の心理が手にとるようにわかるのです。その女性の本当の関心は運命のことではないのです。本当の悩みの種はご主人のことなのです。その女性の心理バランスを見ると、潜在的な関心の対象が知識などの対象には向かっていません。
その最大の関心は人間関係に強く向かっていたのです。このようなタイプの女性は何よりも、愛情的な面をとても大切にするものです。この心理分析が間違うことはまずありません。それをみて私はこの女性が自分の心理を偽っていることに気づいたのです。
人間の無意識はときに非常に複雑な働きをします。このような女性の心理は特別なものではありません。多くの人がこれと同様なことを無意識のうちに行っているものです。
当の本人でさえその事実には気づかない場合があります。最初にこうした本当の深層心理を知ることが重要でしょう。
「大変申し訳ありませんが、あなたの本当の悩みはご主人のことではないでしょうか」
その女性はしばらく黙っていました。沈黙がしばらく続いたあと、女性はいいました。
「そうかもしれません」
この女性はなぜこのような厳しい運命を享受しなければならなかったのでしょうか。たしかにその女性の運命には愛情に苛まれる暗示が出ていました。もし、ご主人が浮気に走らなかったとしても、何らかの別の形で愛情的な問題に悩まされたことでしょう。こうした運命の流れは避けることのできない流れとして、彼女の運命を翻弄していました。
占い講座11−3
■ご主人の浮気は自らが招いた運命の試練だった!
彼女のように人間好きで愛情深い人にとって、愛する人から裏切られることはどれほど辛いものでしょうか。何ゆえ彼女こうした深刻な運命に遭遇しているのでしょうか。生気のまるで無い、死人のような彼女の無表情な顔がその深刻さを物語っていました。
「ご主人の浮気で何か思い当たることはありませんか?」
女性は困惑したような表情をしました。それはそうです。自分の主人の浮気の原因を彼女が知る由もありません。しかし、彼女の運命に出ているサインの暗示と、ご主人の現実的な行動のシンクロ(同調)は、時期の重なりなどを見てもただの偶然では片付けられないものがあるのです。
「別に何もありません」
彼女がそう答えることは当然でしょう。しかし、私の頭の中にはある一つの考えが浮かんでいました。その結論を出す前に、まず彼女の運命の流れを整理しなければなりません。この分析で一番大事なポイントは、彼女の苦しい現在の運命はただの偶然の流れで生じたものでは無いということ。そして彼女の運命には、特に愛情問題に関してそうした目に遭遇させられる、ある種の必然的な理由があることを最初に理解しなければなりません。次にその原因はいったい何か、ということを考える必要があります。
その女性はたしかに愛情深い人です。また、奉仕的な心もあり、けっして利己的な人ではありません。そのような人がなぜこのような深刻な愛情問題で悩まされるのでしょうか。私は彼女の心理バランスを調べながら、そのことを突き詰めていきました。普通に考えればあり得ないパターンです。このような場合は、運命の類型的な法則にしたがって、筋を通して考えていくのが鉄則です。そこで私は彼女の過去の運命の流れを逐一たどり、その原因を探っていきました。
彼女の運命のようなこうした「必然的な運命パターン」に関していえば、現在の運命の中でまったく説明のつかない状況は、その多くが前世と呼ばれる生の領域の中に答えが存在することがあります。そこで彼女の前世の情報を分析していきました。そこまできたときに、その原因らしきものに辿り着くことができたのです。
彼女の前世は「とても社交的で活動的な人」である暗示が出ています。また「非常に人間好きな人」でもありました。なるほど、そのあたりの情報は彼女の強い関心が、「人間関係の構築」に向かっていることでも説明できます。
彼女の前世は、おそらく多くの人との交流があったのでしょう。
これを現代的な例でたとえれば、社交的な芸能人のようなタイプにたとえられるでしょうか。明るく社交的で容姿にも恵まれたタイプの人です。多くの人から愛され、常に明るさに満ちた人生です。多くの人がこうした容姿に優れた人を羨みます。しかし、そうした派手な容姿が、実際には多くの人を惑わす機会を作り出していることを理解せねばなりません。
もし、そのような人が家庭を持った場合、その優れた容姿は反対に災いの種になることもありうるのです。家庭を持っているにもかかわらず、常に周囲の人から言い寄られます。あまりにきれいな容姿が他人を惑わすのです。どれだけの人がその絶え間ない誘惑に打ち勝てるでしょうか。
彼女もそうした誘惑に勝てなかった一人だったのではないでしょうか。もし、彼女が結婚しているにもかかわらずそうした誘惑に陥った場合、一番傷つくのは彼女の配偶者である夫です。彼女の過去の運命において、おそらくこのような運命の流れが存在したのではないでしょうか。もし、そのような状況が実際に起きたのであれば、その情報は彼女の深層心理の中に刻み込まれます。
そして今度の人生では配偶者との立場を交代して、「相手の気持ちを味わう」運命になるのです。このような過去の情報は消えてなくなるものではありません。人の記憶は人生の流れをすべて克明に記憶しているのです。それは自分の心理状態だけではありません。自分と関わった人、すべての心理状態も複合的に記憶しているのです。
そして運命の世界は例のごとく、すべての人の運命を整合化させるような法則のもとに動いていきます。それをさせるのは運命の神などではありません。「御伽噺」に出てくる閻魔様が罰を与えるのではないのです。彼女の深層心理がこうした運命を自ら選択するのです。人間の深層心理にはこうした運命の世界と連動する、大きな機構があるのです。
占い講座11−4
■運命の世界ではすべての人が結びついている
すべての人は運命の世界において、一つの大きな運命機構のもとに深く結びついています。運命の世界は一つの巨大な大木にたとえられるでしょう。
一人一人の人間は、その葉っぱみたいなものです。葉っぱは一見すると、一枚一枚分離したように見えます。しかし、それは枝にしっかりと結びついており、全体とつながっております。そして生きる為の養分をその木全体からもらっています。その養分であるエッセンスは木全体を循環しており、その葉っぱ一枚一枚まで届けられます。またその反対にその葉一枚の情報ですら、その木全体に伝達されていきます。そしてその小さな情報は木全体の情報として処理され、再び、小さな葉っぱに戻されて循環するのです。
運命の世界もこのような巨木にたとえられるでしょう。人間とはその世界に従属している葉っぱなのです。そこから分離して自立しているわけではありません。たしかな生命法則のもとに全体の中の一部として、生かされているにすぎないのです。
「私にそんな世界の話は分かりません。ただ私は、幸福になりたいだけです」
相談者の彼女は残念ながら、私のこうした話を理解できないようでした。でも、いつの日か彼女もそうした運命の世界を理解できる時が来るでしょう。「すぐに幸せになりたい」という彼女の心情はよく理解できます。
しかし、人がこうした運命の世界に従属して生きていく以上、その自然の法則を超えた個人的な運命というものは成り立たないのです。本当に幸せになりたければ、運命の自然法の世界の中に自らを同調させる生き方をしていかねばなりません。そして、その具体的な方法は、自らの心がよく知っているのです。
私たち人間はその心の世界を奥深く探求し、自らが幸福の糸を紡いでいかねばならない存在でもあるのでしょうか。それが真に成されるとき、本当の幸福が現れてくると私は思うのです。

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