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宿命と運命を超えて、人生を変える

何事も偶然に生じることはありません。現在の宿命は前の人生における結果としての宿命であり、それは時間の運行の中において前世に関わる心理的な原因、身体的な原因、対人的な原因、その他多くの宿命的なできごとを再現しているのです。



宿命とは何か


「そうですか。それが宿命なのですか。」

彼は深いため息をつくと、すっかりしょげてしまいました。年のころは三十代の半ば頃でしょうか。きっちりとした格好をしており、いかにも気まじめそうな雰囲気が漂っています。小さな顔に似合わず、がっちりとした体格をしています。

「そうです。それがあなたの宿命なのです。しかし、しょげることはありませんよ。この事実を知った時点で、あなたの宿命は必ず良い方向に向かっていくはずです。」

宿命とは何か彼は自分の宿命を知りたがっていました。幼い頃から非常に内気であり、家族以外の他人に対しては素直に心を開いたことがなかったようです。また、こうした性格のために仕事に対しても積極的になれず、何かと気苦労ばかりしているようでした。彼のこうした宿命的な性格は、すべて生まれた時からの基礎データに反映していました。

「あなたは自分の中に、宿命的に非常に重たい心理を持っているようですね。それがあなたを元気のない憂鬱な状態にしている原因です。」

彼は自分の宿命的ともいえる内向的な性格に、非常にコンプレックスを持っていました。それは彼の心を暗いものにしており、人生を憂鬱なものにしていたのです。彼はその宿命的な原因を知りたがっていました。毎日を楽しそうに暮らしている友人たちを見ていると、なぜ自分だけがこうなのか、劣等感は募るばかりだったといいます。

「先生、その重たい心理って何ですか。」
「重たい心理というのは、二つの方向に引き裂かれている、あなたの心理状態をたとえて言ったものです。」

実際に、彼の心理構造は宿命的に二つの矛盾する心から作られていました。一つは享楽的な方向にむかう心理であり、もう一つは気まじめで律義な方向にむかう心理です。まったく相反する二つの心理状態が彼の心の中に宿命的に同居しており、それは全体として彼の生きる力そのものを喪失させていたのです。

「何となくわかるような気がします。たしかに自分の中にはそうした二つの心があるような気がします。」

彼は繊細な人であり、自分の矛盾する心理の状態に何となく気づいていたようです。
「それがわかれば話は早いでしょう。」

まずは、自分の宿命や運命は自分自身が作り出していることを自覚するのが、一番重要です。多くの人は宿命や運命的な原因を外部に探し求めます。たとえば、あの人がいるから仕事が嫌だとか、この人が自分の足を引っ張っているとか、あるいは社会そのものが悪いとか考えるでしょう。しかし、冷静になって考えれば、あなたが嫌っている相手もあなたのことを同じように思っているのです。また、足を引っ張っている人に関しても、自分が過去に同じようなことをしていた可能性もあるでしょう。社会が悪いといいますが、あなたも社会を構成している一人なのです。みな同じように自分の都合のいいように物事を考えるのです。それはいわば自分を守るための本能なのかもしれません。

「あなたが宿命を作り出す自分の心の内を知り、それを追及していくことが宿命を改善していく秘訣です。他に方法はありません。」



自分の宿命を知る大切さ


彼は自分の宿命を生む自分の心の中に目を向け始めました。それは宿命を改善して運命を良くしていく一歩なのです。彼は自分の仕事がうまくいかない原因を社会のせいにしていました。また、コンプレックスを抱いている内向的な性格を、両親の教育のせいにしていました。失敗する全ての原因を外に見出すことによって、自分の心を慰めていたのでしょう。

でも、そうしたものが彼の宿命の本当の原因であれば、彼の生誕時の心理構造に、こうした性格が映し出されることはありません。それが証明にもなるのです。彼はようやく自分の持って生まれた宿命に気づきつつあったのです。

「私の心理の中に宿命の原因があったというのは驚きです。しかし、なぜ私だけがこうした宿命を背負うのでしょうか。」

自分の宿命を知る大切さ彼の言い分は当然なものでしょう。なぜ、自分だけがこのような宿命を背負うのか、誰でも考えるものです。特に人生がうまくいかないときは、自分の宿命を呪うことさえあるでしょう。彼の宿命的な二重の心理構造は、彼の人生を暗いものにしています。

それは彼の生命力を失わせており、それがゆえに彼は社会の中に溶け込めずにいたのです。引きこもりとまでは言いませんが、友人たちとの交際も少なく、恋人の一人もいない状況は彼にとって辛いものであるに違いないのです。

「ここでもう一つ大事なことを言っておきます。あなたは現在の自分の宿命や運命が偶然に作られたとお思いですか。」

私は反対に彼に尋ねてみました。彼は少しの間、躊躇していましたが、きっぱりと答えました。
「ええ、そう思います。違うのですか。」

彼が答えに窮するのは当然です。こんな哲学的な問いに、すぐに答えられる人はいません。宿命や運命は偶然に作られると多くの人は考えます。それはただの思い込みに過ぎないのです。誰も本当の真相をはっきりとは知らない、というのが事実ではないでしょうか。

「運命や宿命はけっして偶然に作られるものではありません。宿命はすべて過去に原因を持つものです。」

宿命は偶然に作られる産物ではありません。その原因の多くを自分自身の過去に負っており、現在の宿命はその基礎の上に作られているのです。それは人知を超えた巨大な運命機構によって動いており、私たち人間はその中で生かされている存在なのです。しかし、そうした世界にもきちんとしたルールがあり、合理的で秩序のある法則の下に私たちの運命や宿命が作られていくのです。


宿命は自分自身が生み出していた


一見すると偶然のように見える宿命は、けっして偶然の産物などではなく、そこには時空を超えた何らかの原因が存在していたというわけです。二十世紀最大の霊視者といわれるアメリカのエンドガーケイシーは、こうした世界の存在を解明した一人です。彼は常人にはない超越的な能力によってその事実を知ったのです。

「では、私の現在の宿命は、私自身の過去に何らかの原因があるのですか。」

彼は自分の宿命の核心に近づいていました。彼にはようやくその輪郭が見え始めていたのです。

「その通りです。あなたの現在の内向的な性格の原因は、前世と呼ばれる領域に存在します。それはあなたの宿命として心の力を弱めており、あなたが健全に活動するのを妨げる障害となっています。」

実際に、宿命的に二つに引き裂かれた彼の心理構造は、彼の生命力を弱めていました。その原因は彼の過去にありました。彼の享楽的で楽観的な性格が彼の前の姿だったのです。彼は変化を好む風流な人であり、飽きやすい気質のために常に相手を変えていったのでしょう。世の中に「遊び人」といわれる人がいますが、現代的なニュアンスでいえば、彼はまさにこうした人だったのです。彼はそうした自分の人生を変えることもなく、それを記憶の底に残して死んだのでしょう。その記憶は彼の現在の宿命の中に残存し、彼の性格の一端を形成していました。

宿命は自分自身が生み出していた一つの運命が終われば、そこには反省があります。彼は自分のふらふらとした生きからを少なからず反省したのでしょう。現在の彼の性格は律儀で気まじめなタイプであり、どう見ても遊び人には見えません。彼の現在の性格は、つまり、前の人生の反動として彼が作り出した心象イメージなのです。

彼は宿命的に自らの性格を内向的にすることで、自分の内面を見つめ、他人と深くかかわらない人生を選択したのです。それは宿命的に人生を矯正する役割を果たし、彼が他人と深く関われないような心理構造を形成したのです。

「そうですか。そんな世界があるのですか。」

彼はつぶやくように言いました。当然のことですが、彼は半信半疑でしょう。一度でこうした世界を理解するのは困難があります。こうした世界の真偽は、一朝一夕では絶対にわからないのです。

「これは私が運命の研究でつかんできた事実です。もちろん、信じるも信じないも自由ですが・・・。」

無理にこうした世界のことを信じさせる必要はありません。こうした真偽は本来的には一人ひとりがつかむものではないでしょうか。その答えは自らの深層心理の中に見出すことができるのです。


宿命の意味を知れば人生は変わる


「宿命や運命って深いものがあるのですね。では、私はこれからどう生きればよいのですか。」

彼は自らの宿命を知り、これからの運命の方向性を模索しているようでした。宿命と運命の世界は彼の眼前に開けており、それは少しずつ姿をとって現れてきたのです。

「まず、あなたはこうした自分の宿命を否定してはいけないということが肝心です。可能な限りプラスの方向で、宿命を正していかねばなりません。それは長い道のりですが、きっとできるでしょう。」

宿命を矯正的な、否定的なものとして捉えると、おのずと宿命と運命は暗い方向に流れてしまうでしょう。宿命は必ずしも矯正のために存在するのではありません。矯正とはあくまでも度の過ぎた部分に修正を加えるためのものです。それは宿命や運命の本流ではありませんし、そこばかりに気遣いするのは無用なことなのです。

「具体的には何をすればよいのですか。」

彼の心の中に宿命を考え始める何かが動き始めていました。実はそれで十分なのです。そこ姿勢こそが宿命を超越していくために最も必要な要素なのです。彼はそれに気づきはじめており、自らの宿命を乗り越えていくための最初のステップが形成されたのです。

「具体的にあなたがすることは、ただ、自分の心の動きを観察すること、それだけです。」

宿命の意味を知れば人生は変わる自分の心を見つめるだけで宿命が変わっていくと言っても、誰も信じないでしょう。しかし、それは事実なのです。その効果はすぐに出るわけではありません。ですから、その効果が実感できないのでしょう。でも、自分の心を観察するという行為は、宿命や運命を変える方法の中では最も優れた方法ではないでしょうか。仏教の開祖、仏陀が為したことは、ただ自分の心を観察するという行為でした。

心は客観的に観察されるとき、本当の姿を現すのです。それは宿命や運命の世界を構成する基礎であり、あらゆる人間の複雑な心理現象を生じさせる本体なのです。それはカオス的な世界ではなく、精密に組み立てられた法則の下に機能しています。人はそうした心の構造を解き明かしていくことで、自分の存在と本能心理が作り出す存在の違いを、きちんと判断することができるのです。その真偽を分別するとき、人は宿命や運命の世界を超越することができるのです。

「ありがとうございました。自分なりに今後も努力してみます。」

たしかに、彼の心の中には何かが生じたのです。それはまだ種の段階ですが、将来はそれが大きな幹になるかもしれません。帰りゆく彼の姿を見送りながら、未来においてそれが健全に育つことを祈らずにはいられませんでした。




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  オフィスファルの「占いと運命の科学」より 


 


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